Mo Cuishle

記憶とか日記とか

不思議だった出来事

この季節になると、某島に住んでいた頃のことを思い出す。

楽しい記憶はほとんど無くて断片的にしか覚えていないのだけれど、あの頃は常に体調が悪かった。

思い返すと不思議だった出来事が一つある。

今ならやっと笑い話に出来るし、話しても時効だと思うのでここに記してみる。

 

当時の私は、自宅の宿舎から自転車で40分かけて通勤し、半島の反対側にあるCD販売店で働いていた。

台風の日でも半ば意地で自転車通勤を続けていた。南の島の台風は、それはそれは凄くて、「ゴオーーーーー」という風の音で夜一睡も出来ないこともしばしばだった。

それでも、現地で出来た数名の本州出身の友人たちとドライブしたりすることだけを細やかな楽しみに、ゆったりとした島時間を過ごしていた。

 

ある日のこと。

仕事をしていたはずが、気付くと私は病院のベッドに寝かされていた。

後から聞いた話だと、レジカウンターで急に倒れて2人がかりで事務所に運ばれるも、意識が無かったので病院へ搬送されたらしい。

地獄のような日々が始まったのは、それからだった。

 

右下腹部が針で刺されているように痛み、ジーンズがはけない。時には足にまで痛みが響いて歩けず、仕事が出来ない。

酷い時には夜も眠れない。眠れてもうなされて夜中に起きてしまい、また眠れなくなる。

そんな状態が続き、島内、本州の病院を7軒ハシゴしてMRIやCTを撮ったりするも、どの病院でも原因が分からないと言われ途方に暮れていた。

仕事も辞めてしまい、気分もどん底まで落ち込んだ。

 

半年ほど経った頃、ツイッターで同じ島内に住む方からあるリプライをいただく。

それは、「知り合いに診てもらったらどうか」という内容だったのだが、その方の言う知り合いとはユタ神様といって先祖の祖霊と繋がる所謂霊能力者のような人のことだった。

 

当時の私は藁にもすがる思いで、酒の一升瓶片手に駆け込んだ。

そこで聞かされた話は、想像もしないようなことだった。

 

なんと、島人の霊魂が私に憑いているというのだ。

それも、私の行いが原因だという。

理由を知って冷や汗をかいた。

 

体調不良が起こる前、私は本州の友人とある浜辺で花火をしていた。

その浜辺は、昔風葬を行っていた場所だったのだ。

この島は、遺体や遺骨への執着心が強く、衛生上の問題により火葬が義務づけられている日本でも一部の地域では、昭和に入ってからも風葬が行われていた。

これも後から知ったことだが、ここに運ばれた遺体は、岩礁の周りに棲むヤドカリに食べられることによって天に昇っていったという。

 

次の日私は友人に連れられその浜辺に出向き、手を合わせた。

その後体調がスッと良くなったことは言うまでも無い。

本当に不思議だったし、自分の無知さをあんなに悔いたことはいまだに無い。

 

私が土地の伝承に興味を持ち始めたのもそれがきっかけである。

島も、浜も、ユタ神様の名前も書くことは出来ないけれど、郷に入れば郷に従えと言うように敬意を持って住むべきだと身をもって体感した出来事でした。

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